中国では建国初期に都市に流入する大量の農民による社会混乱が深刻になり、いくつかの試験的な試みを経て1958年「戸籍管理条例」を制定し、国民を「農業戸籍」と「非農業戸籍(都市戸籍)」に分けた。農民を農村に封じ込めて農業に専念させ、都市は都市戸籍を持つ市民に限定した。それにより、物資の配給と彼らを管理する仕組みを作り、社会治安の安定を維持していた。しかし、改革開放・近代化路線を推進する中で、90年代に入り沿海地域の急速な経済発展を支える大量の労働者が必要となり、内陸地域の大量の農民が、急速に都市へ移動していった。彼らは農民工と呼ばれ「暫定居住証」を取得して都市に長期滞在する。しかし、特別なコネや高額の資金提供がある場合を除き、医療費、教育、生活・失業保障などで都市住民と同じような待遇はほとんど受けることができない。近年、地方、とくに内陸の都市で、都市と農村の差別的戸籍を廃止する動きが出始めているが、北京や上海など特大都市では戸籍自体が階層化している。さらに差別的な戸籍制度を利用して既得権益化するなど、容易に格差解消に向かってはいない。