中国の人口抑制政策。毛沢東時代が終わり、トウ小平が改革開放路線の推進を決断したとき、すでに大きく膨れ上がっていた中国の人口(1980年で約10億人)は経済成長を阻害する要因になるとの判断が強まった。以後人口抑制の切り札として「一人っ子政策」が採用、実施され、30年余りの歳月を経た。発展途上にある経済成長に一定の貢献を果たしたことは否定できないが、一人っ子で甘やかされ「小皇帝」と呼ばれる社会現象まで起きた。「80後(バーリンホウ)」「90後(ジュウリンホウ)」と呼ばれる一人っ子世代は、中国の繁栄とともに、物質的豊かさの恩恵を受けた。この世代は、格差、差別、権利意識に敏感で、中国社会の今後に影響を強めている。さらに今日一人あたりGDPでいえばようやく中進国に到達した段階にもかかわらず、労働力となる15歳から65歳までの「生産年齢人口」が前年を下回るなど、早くも老齢化社会、労働力不足問題が顕在化し始めた。それに伴い一人っ子政策の緩和が始まったが、即効的な効果を上げるには至らず、中国の人口問題は新たな段階に入り始めてきた。