1980年代後半から90年代にかけて高い成長を維持したASEAN(東南アジア諸国連合)経済は、過度の外資依存とバブル経済化などにより、97年のタイ・バーツ暴落を端緒にアジア通貨危機に見舞われ、98年には大幅なマイナス成長となった。しかし、99年以降は通貨下落による輸出競争力向上などから回復に転じ、政治的混乱などから停滞していたインドネシアも2000年以降は好調が続いた。半導体などエレクトロニクス関連産業の成長が著しいASEAN経済はIT関連需要の世界的拡大のなかで07年まで力強い成長を続けた。近年では中国との関係が深まり、05年にはASEAN10の対中国輸出額が初めて対日本輸出を超えた。ASEAN主要国には日本、アメリカ、ヨーロッパの主要製造企業の世界市場をにらんだ大規模工場新設が相次ぎ、ASEAN地域は中国と並ぶ世界の工場として発展しつつある。08年のリーマン・ショック以降の世界経済停滞の影響から、09年に落ち込みを見せたシンガポール、マレーシア、タイも10年には急回復した。ヨーロッパの金融不安やタイの洪水の影響によりASEAN経済は11年後半には減速傾向となったが、比較的堅調を維持し、株式市場は不安定化した先進国経済からの資本逃避先としての存在感を高め、活況を呈している。