百数十の小島や環礁からなる南シナ海南部の諸島。中国名で南沙。中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイがその一部または全体の領有権を争い、紛争の火種となっている。海底石油や天然ガスが有望視され、北東アジアとインド洋をむすぶシーレーンの要衝でもある。中国とベトナムは1974年と88年に交戦、90年代にはフィリピンと中国、フィリピンとマレーシアが領有権を主張する島での建造物増設をめぐって対立、漁船のだ捕や航空機への銃撃騒ぎが起きた。ASEAN(東南アジア諸国連合)と中国は2002年の首脳会談で、紛争の平和的な解決をめざす南シナ海行動宣言に調印した。しかし、中国は12年6月、西沙諸島の永興島に南シナ海一帯海域を掌握する三沙市を設置し、この海域を通過する外国船舶の臨検を宣言した。ベトナムも対抗して西沙と南沙諸島を自国領と規定する海洋法を制定し、13年1月から発効した。中国は「不法であり無効だ」と主張しており、対立が解ける兆しはない。ASEAN諸国を中心に各国は衝突を事前に防止する「南シナ海における地域的行動規範(code of conduct)」制定を求めてきたが、中国の参加をめぐって対立が深まっている。