経済成長を最優先目標として、少数の政治エリートや軍部が強権によって国家建設を進める権威主義的な政治体制。フィリピンのマルコス政権、インドネシアのスハルト政権、マレーシアのマハティール政権、シンガポールのリー・クアンユー政権などが典型とされる。各国とも国民の政治的自由を抑圧して国内安定を図りながら、先進国からの外資や援助の積極的な導入による輸出志向型の経済発展を進めてきた。経済成長はその受益者として都市を中心に「中間層」と呼ばれる新興中流階層を生み出す一方、富の不平等な分配が国民の貧富の格差を広げる結果を招いた。またマルコス政権やスハルト政権では、大統領周辺の特権層に利権が集中するクローニー・キャピタリズム(仲間内資本主義)が政権の腐敗を招いた。経済成長に大打撃を与えた1997年のアジア通貨・経済危機も、市場経済のグローバル化に対応できないこうした体制の政策の不透明性が一因とされる。スハルト政権の崩壊とマハティール首相の退陣によって開発独裁型政治の時代は終わり、今後は市民の開発過程への参加を通じた社会正義の実現と、開発至上主義に代わる新しい発展モデルの追求が課題とされている。