全世界に居住する中国人・中国系住民は2700万人、そのうち2300万人が東南アジアに居住すると推定される。僑は仮住まいの意で、居住国で中国籍を保持しているものを華僑、国籍を取得したものを華人と呼ぶことが多い(現在は華僑1に対して華人9の割合といわれる)。東南アジア各地への中国人の移住はイギリスによる植民地への労働力導入政策やアヘン戦争(1840~42年)以降の中国南部の困窮化によって急増した。彼らのなかで流通・金融を中心に経済的に成功したものが、華人企業として各国で大きな経済力を握るようになった。冷戦後は対中関係の改善と中国の「改革・開放」政策にともなって、独自の地縁・血縁でむすばれた華人ネットワークを利用した中国とのビジネスが活発化。各国政府も中国市場への参入をめざして彼らを支援しているが、華人との関係は国によって一様ではない。タイではタイ人との通婚が進み、華人企業とのあつれきはないが、マレーシアでは経済的優位にある華人とマレー人の格差是正がなお課題だ。インドネシアではスハルト政権末期の混乱のなかで多くの華人商店が略奪されたが、同政権崩壊後、30年以上禁止されていた中国語の使用や教育が解禁された。