イスラム教徒が多く住むタイ南部で、宗教対立が原因とみられるテロや襲撃事件が相次いでいること。タイは仏教徒が95%を占めるが、イスラム教徒も4%おり、とくにイスラム国のマレーシアに接する南部地域では多くなっている。1960年代から70年代にかけてタイからの分離独立をめざすイスラム武装勢力の動きが活発化したが、政府の作戦により80年代半ばにいったん壊滅したとされている。ところが、ナラティワット県で2004年、軍施設がイスラム過激派に襲われ兵士4人が殺害された事件をきっかけに、南部で爆弾テロや射殺事件が続発するようになった。政府は国軍・警察による取り締まりを強化しているが、これまでに約6000人が犠牲となっている。現在の抵抗勢力の背後関係は不明だが、タクシン政権は「テロリスト」として力ずくで押さえ込む姿勢を示し、05年7月、南部4県を非常事態地域に指定した。政府から解決策を諮問された国家和解委員会は06年6月、暴力の背景にあるとみられる南部の貧困解消や開発促進など非暴力による問題解決を優先すべきだとする報告書を提出。タイ政府は13年2月、反政府勢力との対話に合意した。しかし、その後もソンクラー県などで兵士や警官を狙った爆弾テロが続発している。