ベトナム共産党は2006年4月の第10回党大会で、ノン・ドク・マイン書記長を再任した。また新国家主席(大統領)にグエン・ミン・チェット・ホーチミン市党委員会書記、新首相にグエン・タン・ズン第1副首相を、同6月の国会で選出した。新しい国家主席、首相はともにホーチミン市を中心とする南部の改革派。党大会は、ドイモイ(刷新)政策の加速を盛り込んだ政治報告や党員の私企業経営に道を開く党規約改正なども採択した。市場経済の本格化をめざす新政権は同11月に念願の世界貿易機関(WTO)加盟を果たすとともに、首都ハノイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を開催し、国際社会の主要な一員となったことを内外にアピールした。ブッシュ米大統領のAPEC首脳会議出席を受けて、07年6月にはグエン・ミン・チェット主席が1975年のベトナム戦争終結後初めて国家元首として訪米した。首脳会談で両国は貿易・投資の拡大による経済関係の強化に合意した。しかし高い経済成長は党員や党組織の汚職の深刻化も加速させ、マイン書記長は党大会でこの問題に十分に対処できなかったことを自己批判した。2006年1月に発覚した運輸省を舞台とした巨額汚職事件は、副大臣の逮捕、大臣の辞任にまで発展、さらにマインの親族の関与もうわさされた。汚職などに対する世論の批判の高まりに応えるには民主的な政治改革の推進が避けて通れなくなろうとしている。