ミャンマーのシャン州を中心にタイ、ラオスの三国が国境を接する地帯を指し、世界最大のケシの栽培と麻薬生産の国際的な拠点として知られる。麻薬はタイや中国などを経由して世界中に密輸され、巨額の利益を生み出すことから「黄金」の名が冠せられた。麻薬の多くはミャンマーの少数民族が反政府闘争の資金源として生産し、シャン州の分離独立を求める武装組織を率いて政府軍と戦ったクンサーは黄金の三角地帯を支配する「麻薬王」と呼ばれた(クンサーは1996年に軍政と停戦合意して投降、2007年10月に死亡)。近年は軍事政権が外貨不足を補うために麻薬の生産・輸出に関与しているとして、国際的な批判を浴びている。タイでは、ミャンマーからの覚せい剤の流入が急増し青少年にまで使用者が広がる深刻な事態となっている。このため、タイ政府はミャンマー政府に麻薬撲滅への協力を要請するとともに、2003年には国内の麻薬取引の徹底摘発をめざす麻薬戦争に乗り出した。しかし、警察の容疑者射殺や密売人同士の内紛などで約2000人が死亡、捜査手法に批判が高まった。