フィリピン共産党(CPP)の軍事部門として1969年、旧抗日ゲリラのフク団などを吸収して結成されたゲリラ組織。CPPは現政権の打倒と毛沢東思想に基づく共産主義国家の建設をめざして貧困層に支持基盤を広げ、NPAはマルコス政権末期の80年代半ばには約2万5000人の兵力を誇った。アキノ政権以降の民主化の進展にともない、CPPの政治活動は合法化され、CPP・NPAは武装闘争の是非をめぐり内部分裂し、NPAの兵力は一時6800人にまで減少した。政府との和平交渉も始まったが、貧困撲滅の成果が上がらないことなどから兵力を回復し、国軍の推計では2006年現在の兵力は1万1500人。01年、NPAによる下院議員暗殺事件をめぐり和平交渉は無期延期となり、両者の武力衝突が再発。02年に欧米諸国がNPAを国際テロ組織に指定し資金凍結措置を講じたことから、政府は掃討作戦を強化、戦闘は激化しつつある。政府は治安上最大の脅威とみなしているが、左派系市民団体や専門家は、NPAの温床となっている貧困と政治腐敗を根絶しないかぎり軍事的手段によるNPA一掃は不可能とみている。