ボルネオ(カリマンタン)島北西部に位置する人口35万人の小国だが、豊かな石油と天然ガスの輸出により、一人当たり国内総生産は1万3418ドル(2005年)とシンガポールの2万7490ドル(同)に次ぐASEAN(東南アジア諸国連合)第2の高さを誇っている。住民はマレー系67%の他に中国系、イバンなどの先住民。1984年にイギリスから独立、同年ASEANに加盟した。イスラム教を国教に、世襲のスルタン(イスラム世界での君主の称号)、ハサナル・ボルキア国王を元首とする立憲君主国だが、議会は全員スルタンによる任命制で実態は専制君主制。議会は84年以降活動が停止されていたが、2004年9月に再開され、将来の部分的な議員公選制につながる憲法改正案に同国王が署名した。輸出の9割近くを占める石油、天然ガスの収入に支えられた高福祉と国民懐柔政策により、民主化要求などの反体制運動はほとんど起こらず政治は安定している。しかし、石油、天然ガスの産出は25年間とする試算があり、ボルキアは06年の60歳を祝う式典で石油依存からの脱却と経済構造の多様化の必要性を訴えた。