マラッカ海峡やインドネシア近海は世界有数の海賊事件の多発地域として知られる。国際海事局(IMB)海賊情報センター(クアラルンプール)によると、2004年に世界で起きた海賊事件325件のうち最も多いのがインドネシア領海で93件、マラッカ海峡が45件だった。05年には日本のタグボートがマラッカ海峡で海賊の襲撃を受け、船長ら3人が拉致された。マレーシア、シンガポール、インドネシアに面した全長約800キロの同海峡を通過する船舶は、年間7万5000隻。そのうち2割弱を日本関係の船舶が占め、日本に輸入される石油の8~9割は同海峡を通過する。海賊の主な目的は身代金稼ぎといわれ、武装化が進んでいる。このため、日本は海賊対策として多国間の協力を強化する「アジア海賊対策地域協力協定」を提唱、06年9月に日本、中国、韓国や東南アジア諸国に加え、南アジア諸国やノルウェーなど、15カ国が参加して協定が発効した。シンガポールに海賊情報の共有センターを設立、各国が共同パトロールなどで航路の安全確保をめざす。だが、沿岸国のインドネシアとマレーシアが、情報共有センターがシンガポールに置かれたことなどに反発して同協定への署名を拒否しており、関係国の足並みはそろっていない。また海賊が各国の領海に逃げ込むと、主権の壁に阻まれて捜査協力が難しくなるとの指摘もある。