仏教国として知られるミャンマーだが、イギリス支配時代にキリスト教徒が多くなった東部のカレン族や、イスラム教徒のロヒンギャ族がいる。カレン族はタイ国境で武装闘争を続けてきたが、2012年にテインセイン政権と停戦合意した。しかし、バングラデシュとの国境のヤカイン州に約100万人が居住しているロヒンギャ族については、1982年に成立した市民権法によって国籍を剥奪されたまま不安定な地位に置かれている。軍事政権による弾圧で91~92年と96~97年の二度にわたり、計約30万人のロヒンギャ難民が隣国バングラデシュに逃れた。しかし、バングラデシュ政府は歓迎せず、大多数は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の仲介によってミャンマーに再帰還させられている。民政移管後、他の少数民族勢力とは和解が進んでいるのに対し、ロヒンギャ族についてはミャンマー国民の多数が「バングラデシュからの不法移民」とみなしており、抗争は根深いと言える。2012年にも大規模な衝突が続いて、10万人を超える国内難民が出た。また、人権団体は500人以上が投獄されているとして釈放を求めている。テインセイン大統領は衝突の原因究明に向けた調査委員会を設置したが、一部の仏僧もロヒンギャ族の排除を呼びかけるなど住民間の敵意は消えていない。