南シナ海の西沙諸島(ベトナム名・ホアンサ諸島)海域で、中国が行った油田掘削作業に抗議して、ベトナム各地で起きたデモ。2014年5月、中国はベトナムが排他的経済水域(EEZ)と主張する同海域に、掘削施設を設置。これを護衛する中国艦船と抗議するベトナム船団がにらみ合い、衝突する事件が起きた。ベトナムのグエン・タン・ズン首相(当時)は11日、中国を名指しで非難し、首都ハノイやホーチミンで学生らをはじめとする数千人規模の反中デモが行われた。共産党支配のベトナムで街頭デモは異例であり、当局の意を受けての行動と見られる。国営メディアなども好意的に報じたことで、デモや抗議行動は各地に拡大し、一部が暴徒化。南部のビンズオン省やハティン省では14日にかけて、中国や台湾系企業の工場や事務所が襲撃されて、中国人労働者4人を含めて20人以上が死亡したと外電が伝えた。一部の日本企業も襲われ、ガラスが割られるなどの被害が出た。中国政府はベトナムを非難し、3000人以上の中国人をチャーター船などで避難させた。ベトナム当局も1000人以上を逮捕し、ズン首相も国民向けに違法デモをやめるようメッセージを出すなど、対応に追われた。一方中国も、7月に掘削作業を完了したと発表。8月には習近平国家主席が、訪中したベトナム共産党の特使と会談。さらに15年11月には就任後初めてベトナムを訪れ、国会で演説を行うなど、関係修復を図った。しかし、16年1月、アメリカが「航行の自由作戦」として、西沙諸島近海にイージス艦を派遣すると、中国が強く反発。同年2月には、同諸島内の永興島(英語名:ウッディ―島、ベトナム語名:フーラム島)に地対空ミサイルを配備したことが判明した。