2016年5月の大統領選挙で、ミンダナオ島ダバオ市のロドリゴ・ドゥテルテ市長が当選した。1945年生まれ、サン・ベダ大学法科大学院卒。ダバオ市の検察官などを経て88年に市長に当選。下院議員、副市長を務めた時期を除き、2016年まで計7期、同市長を務める。市長時代は、ダバオ・デス・スクワッドと呼ばれる自警団組織による容疑者殺害も容認する強引な治安対策で知られ、大統領就任後も国家警察を動員して「麻薬戦争」を展開。16年末までに6000人を超える容疑者が射殺されたと言われ、人権団体などから「超法規的殺人」と非難されている。歯に衣着せぬ発言で「暴言王」「フィリピンのトランプ」とも呼ばれるが、好調な経済にも後押しされて、国民の支持は根強い。対外関係では、南シナ海の領有権をめぐってアキノ前政権が中国と対決して16年7月に国際仲裁裁判所で勝訴したのに対し、対中融和に転換。16年10月に訪中し、判決を棚上げする代わりに観光・投資・農業など13の合意文書を交わし、240億ドルの経済協力を取り付けた。一方、人権問題で批判するアメリカや欧州連合(EU)には激しく反発。特にアメリカに対しては10月の訪中時に「決別宣言」を発し、世界を驚かせた。対日関係は16年、17年と連続訪日するなど重視しており、経済支援や投資の促進など実利優先の外交を進めている。