2017年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キム・ジョンナム)が出国手続き中に猛毒のVXを顔に塗られて急死した。実行犯としてベトナム人とインドネシア人の女性2人が逮捕され、殺人罪で起訴された。2人は「いたずらをするテレビ番組の撮影だと言われた」などとして無罪を主張。マレーシア捜査当局は、犯行を指示したと見て事件直後に出国した北朝鮮国籍の男4人を指名手配した。また、重要参考人として大使館員らに出頭を求めるとともに、別の北朝鮮国籍の男を逮捕した。北朝鮮側は「わが国を貶める米韓の陰謀」だとして捜査協力を拒否。マレーシア政府は3月4日、北朝鮮大使の国外退去を要請し、さらに6日には北朝鮮に認めていたビザなし渡航の中止も実行した。北朝鮮も対抗措置として7日、同国に滞在していたマレーシアの大使館職員とその家族9人の出国を禁止。仕方なくマレーシアは30日、北朝鮮国籍の容疑者を釈放・帰国させ、金正男の遺体も北朝鮮に移送したため、引き換えにマレーシア人9名も帰された。事件後、金正男の長男は米中、オランダなどの各国政府や北朝鮮の反体制グループなどの協力で、滞在先のマカオから亡命したとされる。この事件を理由に、アメリカのドナルド・トランプ大統領は北朝鮮をテロ支援国家に再指定した。