1950年代半ばまでの印中関係は極めて友好的であったが、60年代初めに国境紛争で険悪化しそれが80年代まで続いた。ラジブ・ガンディーの時代に関係を修復し、96年に江沢民国家主席が訪印した。2000年5月にナラヤナン大統領が訪中、国境問題の早期解決の希望を表明した。同年11月の第8回印中専門家会議で、印中間で対立度の低い中部国境線545キロの地図を交換し、検証することにした。02年1月には朱鎔基首相が訪印、03年6月にはバジパイ首相が訪中し共同声明を取りまとめ、国境問題解決に向けて双方が特別代表を任命することに合意した。インドがチベットを中国領として明示的に確認し、中国もシッキムについてインドの州として言及し、インド側の主張に歩み寄った。両国の特別代表は12年12月までに16回の会合をもっている。05年4月の温家宝首相の訪印において、両国は「戦略的パートナーシップ」をうたい、国境問題の一括解決の原則に合意した。06年7月には、シッキムのナトゥ・ラ峠(4545メートル)経由の国境貿易も再開した。08年1月にはインドのマンモハン・シン首相が訪中し、平和5原則の強調、両国の世界経済上の地位向上、地球温暖化対策での協調など、両国関係のグローバルな意義を強調する文書「21世紀への共同展望」に合意した。印中間の貿易総額は11年には590億ドルに達している。しかしインドは、中国がパキスタン、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマーなど周辺国との軍事・経済関係を強化していることを警戒している。また06年の青海・チベット(青蔵)鉄道完成に対抗して、インドがチベット自治区に接する国境地域での鉄道や道路網の整備強化を急ぎ、ベトナムとは南シナ海での資源共同開発に乗り出すなど、印中の競合・対立は幅広い舞台で展開されようとしている。