教科書で紹介されるバラモン以下シュードラに至る、いわゆる四姓制度によって想像されるような、世襲的な職業による分業制度としてのカースト制度は、今日のインドでは大きく崩れている。しかし、資産、所得、教育、医療へのアクセスなど、生存の機会の多寡を全体としてみれば、上位カーストが下位カースト(とくに不可触民)の人々よりも、有利な状況におかれていることは否定できない。そのため、独立後のインドでは、指定カースト(不可触民を指す行政用語)、指定部族(少数民族を指す行政用語)に対して、公的教育・雇用、立法府議席などに人口比率に応じた留保(割当)制度を設けてきた。雇用や教育への留保制度は、その後、不可触民以外の下層カースト(行政用語で「その他後進諸階級」と呼ばれる)にも拡大されている。独立後インドでは、留保制度の必要上、指定カーストと指定部族の人口を国勢調査で把握してきたが、2011年の国勢調査と連携して「その他後進諸階級」をふくむカースト別人口の調査も行われた。