イスラム国家樹立を掲げるパキスタン国内のタリバン支援勢力。アフガニスタンのタリバン政権の崩壊後、アフガニスタンと国境を接する北西辺境州、連邦直轄部族地域(FATA)およびバローチスタン州は地元住民の支援を受けたタリバン残存勢力の有力な根拠地となった。アメリカの圧力を受けて、パキスタン政府がタリバン残存勢力やアルカイダの掃討を強化するなかで、国内のタリバン支援勢力は2007年にはバイトゥッラー・マフスードを指導者(アミール)とする組織「パキスタン・タリバン運動」を結成した。同運動は政府軍と断続的に戦闘を続けながら北西辺境州のスワトや連邦直轄部族地帯の南北ワジリスタンに影響力をひろげた。そのためパキスタン政府軍は09年4月からスワト、続いて同年10月からは南ワジリスタンに政府軍を大々的に投入した。米軍もまたアフガニスタン領から発進する無人偵察機で、タリバン、アルカイダなどの外国系テロ組織の根拠地に対して空爆を加え、民間人を巻き込んだ被害を与えた。こうした空爆により09年8月にはバイトゥッラー・マフスードが殺害された。ハキムッラー・マフスードが後継指導者となった。米軍やパキスタン政府軍の攻撃に対して、「パキスタン・タリバン運動」は首都イスラマバード、さらには軍都ラワルピンディー、ペシャワル、ラホールなど主要都市での無差別的な自爆テロで反撃している。13年11月にハキムッラーはアメリカの無人攻撃機によって殺害され、後継にはマウラナ・ファズルッラーが選任された。