インドではいわゆる「国民背番号制」事業が導入されつつある。住民登録制度や出生・死亡の登録が不備なインドでは、従来から食糧配給証や有権者登録証の正確性が大きな問題となっていた。2001年の9.11同時多発テロをきっかけに、当時の国民民主連合(NDA)政権は、治安上の配慮から市民権法を改正して国民登録カード制の導入を図った。この制度は、04年に成立した統一進歩連合(UPA)政権によってごく一部の地区で試験的に導入されたが、09年2月同政権は計画委員会内に「インド国民固有番号庁」を設置した。09年5月に再選された第二次UPA政権は、有力IT企業インフォシス(Infosys)社共同会長のN.ニレカニ(Nilekani)を同庁長官に任命し、12年11月までに2億1000万人に対して固有番号を交付した。新構想ではカードは発行せずに番号の交付のみを行い、全国農村雇用保証事業や配給制度の受益者は、当該事業の受給申請時に顔写真、虹彩パターン、十指すべての指紋を登録して12けたの固有番号を交付される。この固有番号は社会給付、保険、銀行口座開設など広範な分野で共通に用いられる。インドの「データベース国家」化への第一歩としてその実施状況が注目される。