インドの国防費は2012年に468億ドルで、世界第8位の規模である(SIPRI2012による)。対GDP比で2.5%を占める国防費は、急速な経済成長により、ここ数年のうちに日本(第6位、約500億ドル)を上回ると予想される。世界で100万人以上の陸軍兵力を持つ国はインドを含め5カ国ある(他は中国、アメリカ、ロシア、そして北朝鮮)。インドは、西から時計回りにパキスタン、中国(チベット)、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマーと、1万キロ以上に及ぶ国境を共有する。中パ国境には正規軍を配備し、他の国境には主に国境警察隊が配備されている。国防予算のちょうど5割が陸軍に割り当てられている。またインド陸軍は、イギリス植民地時代から海外派兵の経験がある。これが国連のPKOにインド軍が頻繁に参加する一つの背景にもなっている。近年注目されるのは、第一にインド海軍力の増強である。1970年代から始まった海軍力の増強は、71年の第三次印パ戦争(バングラデシュ独立戦争)の際のアメリカ第7艦隊によるベンガル湾進出、インド洋のディエゴ・ガルシア島(イギリス領)の米軍出撃基地化、日本などの中東原油輸入国がもつ、インド洋における「シーレーン」、「海賊」問題への関心などを契機にしている。近年では、中国のインド洋進出にも警戒を強めている。インドは、マラッカ海峡から東アフリカ沿岸までを自国の監視圏とみなし、アンダマン・ニコバル諸島には、本土にはない三軍統合軍管区が、2001年に初めて設置された。ロシアからの空母購入、潜水艦建造のほか、アメリカ、日本などとの共同演習が頻繁に行われている。軍事力の増強はさらに、新規戦闘機の大量購入、パキスタンを視野に入れた対地ミサイル、中国本土を視野に入れた中距離ミサイル(射程3500キロのアグニIII)など、核搭載能力をもつミサイル開発計画にも現れている。