3万8000平方キロの国土(ほぼ九州に相当)に人口約70万人を擁するブータンでは、前代のジグメ・シンゲ・ワンチュク第4代国王のもとで、憲法制定の準備が開始され立憲君主制への移行がはかられた。前国王は06年12月にジグメ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク皇太子に譲位し、新国王のもとで07年末には上院選挙、08年3月には下院選挙が実施された。同年7月に施行された新憲法では、ブータンは民主的立憲君主国と規定され(第1条)、国王は65歳で退位すると定められる(第2条)。また選挙制度も独特で、登録を許可された政党のうち、予備選挙での上位2政党のみが、総選挙で国会の議席を争うことができる(第15条)。ネパールでの王政崩壊で、ブータンは南アジアに残る唯一の王国となった。新国王の即位式は08年11月に執り行われた。国防、通貨、貿易をはじめとしてインドの圧倒的な影響下にあるブータンは、前国王がうちだし、世界的にも知られるようになった国民総幸福量(GNH)にもとづく均衡のとれた開発政策を模索している。GNHは、良き統治、持続的な社会経済発展、文化の保存、環境の保全の4つの柱からなる。国内のネパール系住民との摩擦や、首都ティンプーを中心とした近代化の進行のもとで、GNHの理念をいかに実現するかが注目される。