インド東北部のアッサム州は民族の「るつぼ」である。州の総人口3117万人(2011年調査)の言語(民族)構成は、多数派のアッサム語住民48.8%のほかに、ベンガル語27.5%、ヒンディー語5.9%、ボド語4.9%、ネパール語2.1%、その他話者10万人以上の言語が8言語という複雑な様相を呈している(言語人口比は2001年調査)。平野部の先住民であるアッサム語やボド語(チベット・ビルマ語族の言語)住民と、ベンガル語移民の間では、言語や農地・森林をめぐる対立が続いてきた。1983年2月には2000人以上のベンガル語移民がアッサム語住民やボド語住民によって殺害された。商業活動や茶園労働を目的に、それぞれ北部インド、ネパールから流入したヒンディー語、ネパール語住民も、しばしば排斥運動の対象になってきた。とくに平野部の少数民であるボド語住民の間では、地域的自治の主張や、アッサム語住民やベンガル語移民に対する先住者意識が根強い。こうした緊張関係から、2012年5月末には、アッサム州コクラジャル県を中心にボド語住民とベンガル出身のイスラム教徒間の暴動が発生した。この暴動はミャンマーでのロヒンギャ(イスラム教徒)迫害と時期が重なったこともあり、憤激したインドのイスラム教徒が、大都市のムンバイやバンガロールで、携帯電話やネットを通じてアッサム州出身の出稼ぎ者への報復を呼びかけた。このため、アッサム州の出稼ぎ者が恐慌をきたして大量に帰郷するという事件が発生している。