インド経済の成長とともに、鉄鋼、石油、電力、情報技術、不動産などの分野で活動するインドの有力企業グループ。財閥の総帥のなかからは、世界の資産家ランキングの上位100位に3人(22位のM.アンバニ、41位のL.ミッタル、91位のA.プレムジー)が、200位のなかにはさらに7人が顔を出している(「フォーブス2013」)。インド系企業によるヨーロッパの著名企業(鉄鋼のコーラス社、アルセロール社、高級自動車のジャガーランドローバー社)の買収も注目された。インドの財閥の形成は古く、イギリス領期の貿易商から身を起こし、製鉄業に進出したタタ財閥や、同じ出自から繊維産業に進出したビルラ財閥を筆頭に、ボンベイ(現ムンバイ)やカルカッタ(現コルカタ)を中心として活発な民族系資本が誕生した。かれらはインド独立運動にも陰陽の支持を与えてきた。そして、独立後の国家主導の統制的な経済運営のもとにおいても、タタやビルラらの既存の財閥は、着実に活動分野と資産規模を拡大していった。また1980年代の統制経済の末期には、アンバニ一族のリライアンス・グループが会議派政権に巧みに接近して急速な成長を遂げた。さらに、90年代以降になると、経済開放政策への移行とともに参入機会の生まれた情報技術、不動産、石油を基礎にした新興財閥の成長が著しかった。たとえば近年の上位10位に数えられる財閥のなかでは、旧財閥ではタタ・グループ、ビルラのアディティヤ・ビルラ・グループが数えられるにとどまる。他の8グループは、石油部門を基幹とするM.アンバニ(兄)のリライアンス・グループ、電力部門が核のA.アンバニ(弟)のリライアンスADAグループがトップの地位を占め、携帯電話、通信部門のバーラティー・グループ(L.ミッタル)、情報技術のウィプロ・グループ(A.プレムジー)、非鉄金属のスターライト・グループ、不動産のDLFグループ、鉄鋼のJSWグループ(ジンダル)、港湾などインフラ部門のADANIグループなどが続く。いずれも創業者ないしはその親族が経営を握る新興グループである。