2014年に予定される米軍撤退を展望し、アフガニスタンをめぐるインドとパキスタンの綱引きが激化している。パキスタンは南北に長く、東西に狭い国土の、インドに対する戦略的な脆弱(ぜいじゃく)性を意識して、従来からアフガンに親パキスタン政権を擁立する必要性を感じてきた。隣接するアフガン国内のパシュトーン人を主体とする、イスラム主義的なタリバンやハッカニ・グループへの陸軍を通じた工作は、そうした対印戦略という側面ももっている。これに対してインドは、11年10月にはアフガンとの間で、戦略的パートナーシップ協定を締結し、アフガンへの関与を強めた。また撤退後の政治的・経済的安定を望むアメリカの後押しもあって、従来からの技術教育、小規模開発プロジェクト、ダム建設などを強化するほか、治安部隊や、一部軍人の訓練も実施している。また中国による銅・石油・天然ガス資源分野での投資を意識して、12年7月にはデリーでアフガン投資サミットを開催して、石炭部門での共同開発や民間企業の進出を急いでいる。インドのアフガン進出にとって重要なのはイランとの協力である。パキスタン経由のアフガン向け陸路輸送がパキスタンによって拒否されているために、インドは、イランのチャーバハール港とアフガンのデララムを結ぶ幹線道路を完成させ、12年には、同港の開発をめぐるイラン、インド、アフガンの3国の作業グループを発足させた。イランは、12年5月にアメリカ・アフガン間で結ばれた安全保障協定が14年以降10年間の米軍駐留を規定していることを、対イラン対策を視野に入れた恒久基地化の動きとして警戒しており、アフガンをめぐる印パ関係ではイランの動向からも目を離せない。