2014年5月首相に就任したインド人民党政権のモディ首相は、8月15日の独立記念日演説で、「清潔なインド(スワッチ・バーラト)」を標語に掲げ、生活環境を清潔に保つことを国民に訴えた。この訴えをきっかけに主に都市部で市民や政治家が街路の清掃にいそしむ姿が目立つようになった。この訴えのもう一つの焦点は、有名な経済学者アマルティア・センがかねてから訴えてきた家庭内の便所の設置である。インドではいまだに世帯の5割以上が野外で排せつする。野外排せつ(オープン・デフェケーション)は衛生上問題が多いだけでなく、女性にとっては極めて苦痛なうえ、性的暴行を受ける危険も伴う。モディ首相の演説はこうした状況に一石を投じたが、街路や便所の清掃はカースト序列最下位の不可触民に任されているために、彼らの労働条件の改善も同時に求められる。また便所の清掃には給排水が不可欠であり、都市や農村での生活用水の不足も大きな障害になってくる。またより広い意味での清潔さには、大気や河川の汚染、森林破壊などを防止する環境保護策も視野に入れられねばならない。