2016年7月1日夜、バングラデシュの首都ダッカの高級住宅街にあるレストランで発生したイスラム過激派によるテロ事件。人質の死者20人のうちに7人の民間日本人が含まれていた。海外過激派勢力の国内侵入を否定するバングラデシュ政府は、事件が国内のイスラム過激派組織、バングラデシュ聖戦士団(JMB)の一分派によるものだとしている。一方、多国籍化する過激派組織「イスラム国」(IS)は、事件発生直後に関係通信社を通じて現場の写真を公表し、実行犯を「カリフ国家の勇敢な兵士たち」と称賛し、事件への関与を示唆した。実行犯は5人で、全員が治安部隊に射殺された。うち4人は有名私立大卒や与党幹部の息子など裕福な家庭の出身で、1人のみが従来から過激派組織の供給源とされてきたイスラム神学校(マドラサ)出身者であった。5人とも16年初めから所在が不明となっていたが、バングラデシュではほかにもおよそ100人以上の若者が所在不明になっており、その一部はISに参加した可能性があるという。バングラデシュでは1990年代以降、国内最大のイスラム主義政党であるイスラム協会(JI)とその学生組織であるイスラム学生戦線(ICS)の出身者を中心に、今回の事件に関わったとされるJMBほか、約20団体ものイスラム過激派組織が存在してきた。今回は、これらのうちJMBをはじめとする有力な組織のメンバーが、ISへの忠誠を共通の絆にして、これまでにない大規模なテロ攻撃に走ったものと見られる。