6万~2万年前に東南アジア方面よりオーストラリアに移住してきたとみられる狩猟採取民族。1788年の白人入植時の推定人口は約75万人で、白人オーストラリアの発展とともに人口は激減し、滅びゆく人々とされていた。しかし20世紀初頭に混血アボリジナルへの支援が始まり、人口は次第に回復。現在、アボリジナルを自認する人口は54万人(全人口の約2.5%。2011年現在)だが、21年には70万を超えると予測されている。アボリジナルの多くは依然として貧困状態にある。しかし1960年代からの土地権回復運動が実を結び、92年6月には連邦最高裁判所がアボリジナルやトーレス諸島人に対して、オーストラリアに対する土地占有権(先住権原)を認め、「無主地(テラ・ヌリウス)オーストラリア」の通念を打ち破るマボ判決を下し、大論争を呼んだ。当時のキーティング労働党政権は、93年に先住権原法を制定し、94年には先住権原審判所を設置した。審判によって先住権原が認められた場合、政府は金銭的補償をする必要がある。しかし、ハワード保守連合政権は白人の土地所有安定のため同法を修正し、先住権原の申請と認定を困難にした。アボリジナルは過去の差別政策への謝罪と、今後の経済援助を含む和解協定締結を求めている。謝罪拒否の姿勢を貫いたハワード首相に対し、労働党のラッド前首相は、2008年2月、連邦議会で謝罪した。ただし、補償には応じていない。またハワード政権が07年に始めた北部準州のアボリジナル・コミュニティーへの、家庭内暴力・飲酒・若者の非行対策や秩序維持を掲げた連邦軍・警察の緊急介入政策は、国連からの批判にもかかわらず継続している。