オセアニア経済の停滞が近年生みだした問題。ナウルは、もともとタックスヘイブンだったこと、主要な金融センターから遠隔地にあること、そして不正金融活動への政府の監視も甘いことなどから、不正なオフショア金融の巣窟となり、テロ組織や犯罪組織の資金洗浄(マネーロンダリング)に利用されていると疑われてきた。しかし2005年10月、経済協力開発機構(OECD)の資金洗浄対策機関である金融活動作業部会(FATF ; Financial Action Task Force)は、同国の資金洗浄対策を評価して、洗浄監視活動に関する「非協力国リスト」からナウルを削除した。ナウル経済はリン鉱石枯渇のため危機状況に陥っており、同年11月にはオーストラリア、ニュージーランドを中心とする援助国会議が開かれた。近年、ナウルは台湾あるいは中国からの援助を引き出すことにも熱心である。02年には台湾と断交し、中国と外交関係を樹立したが、05年に中国と断交、台湾と外交関係を復活させた。ナウル経済を支えてきた唯一の産業であるリン鉱石が枯渇寸前であり、ポストリン鉱石対策が当面の最大課題。現在、入漁量が大きな収入源だが、商業的漁業はない。なお、12年になると、オセアニア地域は、ニュージーランドやオーストラリアに、麻薬や銃砲が不法に持ち込まれる犯罪組織の暗躍地となってきている。アジア系地下組織が太平洋の無人島で、麻薬の材料を大量に製造して、人気のないニュージーランド辺地海岸に陸揚げし、犯罪組織によって都会に持ち込まれていると報じられている。通常の麻薬密売を超えた大きな犯罪組織の活動が、3年以内に顕著になるとみられている。オセアニア島しょ国政府は、賄賂に弱く、金融制度が未整備で、国境の監視が行きとどかず、犯罪組織にとって格好の活動の場所とみられている。