パプアニューギニアとブーゲンビル島、ソロモン諸島、フィジー、トンガなどに、東ティモールや、パプア自由連合の独立解放運動による政情不安を抱えるニューギニア島のインドネシア領パプア州(旧イリアンジャヤ州)、かつて独立紛争を経験したバヌアツやニューカレドニアなどの島しょ国を加えた地域は、オーストラリアから見て、同国を弓形に覆う地域である。かつて楽園地帯といわれていたが、脱冷戦期前後より国内紛争を抱え、現在では安全保障上の不安地帯となっている。このことをオセアニアの「バルカン化」とか「アフリカ化」などと表現するオーストラリアの研究者がいる。オセアニアの紛争拡大を他地域の名称を冠して表現することへの批判から、近年では、「不安定の弧」と表現することが多くなり、2009年のオーストラリア連邦政府国防白書にも採用されている。2000年代後半に入るとPKO活動の効果により東ティモールをはじめパプアニューギニア、トンガ、ソロモン諸島なども安定したことから、この表現を目にする機会は減っているが不安定要素が消えたわけではない。