TPPは、例外品目を認めず、完全な関税撤廃を目指すとともに、人の自由移動を求めている。従来の2国間の自由貿易協定(FTA)や経済連携協定(EPA)のように、例外品目や金融や情報通信、行政サービス等への参入障壁を設けることができない自由化度の高い協定であり、影響範囲も大きい。TPPは、環太平洋戦略的経済連携協定(TPSEP ; Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)を基礎に発展したものである。TPSEPは、シンガポール、チリ、ニュージーランドの3カ国が2002年に加盟して成立したもので、その後、環太平洋戦略的経済パートナーシップ(P3CEP ; Pacific Three Closer Economic Partnership)として、さらに05年4月にブルネイが加わりP4CEP(P4)として継続していたが、06年5月に包括的多国間経済連携協定として発効した。TPSEP同様に、TPPは当初の4加盟国に続き、10年3月よりオーストラリア、ペルー、アメリカ、ベトナムが拡大加盟交渉を開始し、10月には、マレーシアも協議に参加している。09年11月にシンガポールで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議においてアメリカのオバマ大統領が参加を表明し注目を浴び始めた。オセアニア諸国では、ニュージーランドとオーストラリアがTPPに熱心だが、それは、APECのアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)や東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした枠組みの各種の交渉が、いまだ構想段階にあり停滞気味なことに加え、それらにはアメリカを排除しようとする中国の思惑が見え隠れすることもあり、アメリカを除くアジアとの連携には進展が望めないことの結果である。ニュージーランドのオークランド市で開かれた12年12月のTPPの第15回拡大交渉会合には、カナダとメキシコが加わり、交渉参加国が11カ国に増えた(このほかメキシコ、ペルー、マレーシア、ブルネイが交渉に参加)。TPP交渉は、農牧畜産品の関税撤廃や知的財産保護など意見の隔たりが残る分野も多いことが明らかになっている。日本は13年7月より交渉に参加した。