オーストラリア政府が2011年7月10日に発表した、温暖化ガスの排出企業に炭素税を課すことを柱とした包括的な地球温暖化対策(clean energy legislative package)。12年7月から導入し、その後15年7月には排出量取引制度(ETS ; emissions trading scheme)に移行する予定。二酸化炭素(CO2)排出量の多い企業約300社(当初は1000社を予定)にCO2排出1トン当たり23豪ドル(約2000円)の負担を求める、炭素税とも呼ばれる「炭素価格制度」である。導入後、負担額を毎年2.5%ずつ引き上げる予定。新制度を通じ企業に温暖化ガスの排出削減を促し、20年までに1億6000万トンのCO2排出量削減を目指す。炭素価格制度導入は諸物価を引き上げるので、家計の負担は週9.90豪ドル増えると連邦政府は試算し、全体の9割に相当する世帯を対象に、炭素税の税収の50%以上を、補助金や減税に回すと公約している。同税により大きな影響を受ける産業には3年間で92億豪ドルを支援する。07年に当時のハワード政権がETS導入を表明し、その後のラッド政権が法案化したが上院が否決した。ギラード首相も10年8月の選挙戦中に、任期中は炭素税を導入しないと公約したが、クイーンズランド大洪水直後の2月に一転して炭素税計画を発表した。公約違反であると受け止められ、その後支持率が低迷。オーストラリアの温暖化ガス排出量は05年時点で世界全体の1.5%に過ぎないが、人口1人当たりの排出量は27.3トンで先進国では最大。連邦政府は温暖化ガス排出量を20年までに00年比で5%以上減らし、50年までに同80%削減する目標を掲げている。緑の党の協力もあり、オーストラリア連邦下院は11年10月に、上院は11月に可決し、法案は成立した。11月には、新税導入を有権者の53%が支持(反対38%)しているとする世論調査も公表されたが、12年7月より炭素税は大きな混乱もなく導入された。