2013年9月の総選挙に勝利したトニー・アボット新首相(就任時55歳)が率いる保守連合政権。アボットは、1957年イギリス生まれだが、シドニー大学で学んだ後オックスフォード大学大学院に進学している。94年に初当選し、ハワード政権時代には雇用、医療、教育、地方自治、高齢者対策などに関連する大臣を歴任。ハワード首相の後継者と目されていたが、野党時代はネルソン、ターンブルがリーダーとなったため、2009年になるまで待つ必要があった。先の総選挙で健闘したことから、その後もリーダーを続けた。ギラード元首相とラッド元首相が主導権争いをしていた不安定な労働党政権に対して、安定的な党運営を維持しつつ、炭素税廃止を訴え続けたため人気が上昇し、13年9月の総選挙で大勝した。ハワード首相時代と同様に新自由主義経済政策の続行と、福祉、医療、教育などでは合理化を進める意向をもっている。炭素税廃止を公約として勝利したが、ラッド、ギラード元首相同様、ねじれ議会に直面し、廃止には苦労している。経済面では、中国、インドの経済成長の陰りもあり、資源ブームの終焉(しゅうえん)に直面するとともに、13年に相次いでオーストラリアから工場撤退を打ち出したフォード、GMへの対応に苦慮している。14年2月にはトヨタも工場撤退を表明した。また、外交面では経験不足が懸念されている。ボートピープルの扱いを巡りインドネシア政府と既に対立している。