1960年代に公民権運動やベトナム戦争を背景として広がったリベラルな風潮への反動で、70年代以降、聖書の文言を重視するキリスト教原理主義が台頭。その中から妊娠中絶や同性愛に反対し、公立学校での祈りの復活をめざすなど、キリスト教の伝統的な道徳的価値を積極的に擁護する組織的運動が生まれた。この運動を推進する勢力を宗教右派(キリスト教右派)と呼ぶ。79年にテレビ伝道者ジェリー・ファルウェルが興した道徳多数派(モラル・マジョリティー Moral Majority)は、共和党保守派と結びつきレーガン大統領誕生の原動力となった。やはりテレビ伝道者のパット・ロバートソンが89年に創立したキリスト者連合(Christian Coalition)が、90年代には強い政治力を誇った。その間、家族の価値を守ることを最重要視する「家族フォーカス(Focus on the Family)」「家族調査評議会(Family Research Council)」や「アメリカのために憂慮する女性(Concerned Woman for America)」といった宗教右派団体が次々に結成された。