アメリカ大統領は国家元首(head of state)でもあるが、厳格な三権分立制度下での行政府の長として、立法府の連邦議会、司法府の連邦最高裁判所からのチェックを受けつつ内政、外交、軍事面で広範な権限を与えられている。大統領行政府(Executive Office of the President)は、内局ともいえるホワイトハウス事務局(White House Office)と、それぞれ独自の権限をもつ機関で構成されている。政府に法案提出権がないため大統領が政府の基本方針を教書(message)の形で表明し議会に立法化を要請する。大統領が憲法上の義務に基づき「連邦の状況(State of the Union)」を議会に報告するのが一般教書で、政府予算案と長期財政運営の指針を示す予算教書(Budget Message)および経済政策の基本方針を示す大統領経済報告(Economic Report of the President)と併せて三大教書と呼ぶ。大統領は、議会の承認や立法を経ずに直接、連邦政府や軍に命令を発することができる(大統領令)。また、連邦議会上下両院を通過した法案に署名しないことでその成立を阻止できる大統領拒否権(Presidential Veto)をもつ。ただし拒否権発動後に差し戻された法案を上下両院が再審議し、それぞれ出席議員の3分の2以上の多数で再採択した場合、大統領拒否権は覆され法案は大統領の署名がなくても成立する。これをオーバーライド(override)という。