アメリカ国防総省が、米軍の兵力構成や配備など米軍全体のあり方を総括するとともに、向こう20年程度の世界情勢を展望・分析した中長期的戦略文書。4年ごとに議会に報告するよう義務づけられている。アメリカの安全保障政策の基本文書の一つで、日本の安全保障政策にも影響を与える。QDRは、ソ連崩壊など冷戦構造の転換を受け1997年に初めて策定され、2001年、06年、10年に続いて14年3月に5回目のQDRが公表された。06年QDRでは、21世紀の国際安全保障を決定するカギとなる国家として中国、インド、ロシアを名指しし、敵対国になるかパートナーになるか分からない「戦略的岐路にある国家」と位置づけた。10年QDRは、同時に発生した二つの地域戦争に対応するという冷戦後の「2正面戦略」を改め、様々な状況下で多様な任務を遂行する柔軟で適用力の高い国防態勢に転換する方針を表明。米軍の主要任務としてアメリカ本土防衛、対武装勢力・対テロ作戦での勝利、サイバー分野での効果的な軍事行動などを挙げている。14年QDRには、中国の海洋進出に対抗するため、2020年までに米海軍艦船の6割を太平洋地域に配置し、日本周辺の海軍力を増強することなどが盛り込まれ、アジア太平洋重視の政策を堅持する姿勢を示した。