米軍組織の軽量化、機動性、迅速性を追求する抜本的な改革を進めてきたブッシュ前政権は、ハイテク化や基地の再配置などによって米軍部隊を世界中に急派できる態勢づくりをめざしてきた。ブッシュ大統領(当時)は2004年8月、その一環として在外米軍再編計画を発表、向こう10年でアジアとヨーロッパに駐留している米軍の約3分の1にあたる6万~7万人を削減、帰国させる方針を示した。在外米軍再編には、ヨーロッパでの防衛負担を軽減する一方で、テロや大量破壊兵器拡散の温床とされる中東から北東アジアにかけての不安定の弧(arc of instability)でも柔軟かつ機敏に有事対応できる態勢をめざす狙いがある。ヨーロッパと東アジアで維持されてきた「10万人態勢」が終わり、冷戦終結後最大規模の米軍再編となる。オバマ大統領は11年11月、オーストラリアを訪問し、約2500人規模の米海兵隊を北部ダーウィンに駐留させる計画を発表、12年4月から駐留が始まった。オーストラリアへの米軍の本格駐留は初めてで、アジア太平洋地域を最優先すると表明したオバマ大統領の安全保障政策の一環であり、同地域で軍事的影響力を強める中国を封じ込める戦略的意図がある。