CIA(Central Intelligence Agency 中央情報局)が国際テロ組織アルカイダなどのテロ容疑者を収容する「黒い場所(ブラック・サイト)」と呼ばれる秘密収容所を東欧など8カ国に設置したとするワシントン・ポスト紙の報道(2005年12月)がきっかけで疑惑が浮上。ヨーロッパ各国の空港を容疑者の移送のため通告なしに利用したり、収容所で容疑者に対する虐待や拷問が行われたりしていた可能性があるとして各国の主権や人権問題の観点から非難の声が上がった。ヨーロッパ46カ国が加盟する人権擁護機関である欧州評議会が06年6月に公表した調査委員会の報告書は、ポーランドとルーマニアに秘密収容所が設置された疑いが強いとし、14カ国が容疑者の移送に協力、容疑者を拘束しアメリカ当局に引き渡していたと指摘。ブッシュ大統領(当時)は06年9月、場所を特定しなかったものの「テロ容疑者をアメリカ国外で拘束し尋問してきた」と述べ、秘密収容所の存在を初めて認めつつ「対テロ戦争で不可欠」として海外での収容や尋問を継続する方針を示した。欧州評議会が07年6月に発表した調査委員会の報告書は、03年から05年の間にポーランドとルーマニアに設置された秘密収容所をCIAが直接運営していたことを確認している。オバマ大統領は09年1月22日、同収容所の閉鎖を柱とする「尋問に関する大統領令」に署名し、CIAによる尋問のやり方を見直すよう指示した。司法省が09年8月に一部を公開したCIAの報告書で、ブッシュ前政権下でテロ容疑者に対して用いられた過酷な尋問方法が明るみに出た。