知的設計(論)。ダーウィンの進化論に対して、生命や宇宙の複雑な構造には変異や自然選択では説明できない「知的意図」が介在したと主張する。アメリカ国内で近年台頭してきた理論で、学校教育への導入の是非をめぐり論争が続いている。アメリカでは、神が万物を創造したとする旧約聖書に基づく天地創造論については、政教分離を定めた憲法に違反するとの1968年連邦最高裁判決に基づき公立学校で教えることは禁止されている。しかし、神の存在を棚上げして天地創造説とは一線を画す知的設計論を学校教育に導入するよう求める動きが活発化し、ブッシュ大統領(当時)は2005年8月インタビューで知的設計論を学校で教えることの是非について「異なる考え方を教えることは教育の一環だと思う」と容認する姿勢を示した。同年11月にはカンザス州教育委員会が公立学校の生物の授業で知的設計論にも触れられるようにするカリキュラム改訂案を採択した。一方、ペンシルベニア州のハリスバーグ連邦地裁は同年12月、知的設計論は科学的理論ではなく宗教的見解であり、憲法の政教分離原則に違反するとして、同州ドーバー地区の公立学校で教えることを禁じる判決を下した。05年11月に公表されたオハイオ大学による世論調査では、天地創造説を信じている人が54%、公立学校で知的設計論を教えることに賛成する人が50%。07年6月のギャラップ社による世論調査では、天地創造説について39%が「正しい」、27%が「多分正しい」と答えている。知的設計論は19世紀初頭にイギリスの神学者が主張したのが始まりとされる。