約3億丁にのぼる銃器が個人所有されているアメリカでは、毎日平均34人の命が銃によって奪われている。2012年12月14日に起きたコネティカット州の小学校銃乱射事件を受けてオバマ大統領は13年1月16日、銃購入者の身元調査の強化や殺傷力の高い銃の製造・販売禁止などを柱とする新たな銃規制法の成立を議会に求めるとともに、23項目の包括的な銃規制強化策を発表した。しかし、上院は4月17日、同法案を否決し、オバマ大統領は「ワシントンにとって恥ずべき日だ」と反対した議員らを非難した。銃の乱用による悲劇が起きるたびに銃規制を求める声が高まるが、銃規制が難しいのは、憲法修正第2条で「武器を保有・携帯する権利を侵してはならない」としているからだ。さらに全米ライフル協会(NRA ; National Rifle Association of America)など、銃規制反対派の根強い抵抗に遭って、多くの銃規制法案が成立を阻止されている。NRAは1871年に創設され、銃器業者、銃愛好家など400万人を超える会員を擁するロビー団体で、強力な政治力と資金力を誇る。1994年に10年間の時限立法で成立した銃規制法(殺傷能力の高い19種類の攻撃的銃器の製造・販売禁止)を期限切れの2004年にロビー活動で失効させた。小学校乱射事件直後行われた世論調査では「より厳しい銃規制」支持は54%。乱射事件が起きると自衛のため銃購入者が増えるという悪循環も続いている。連邦最高裁判所は、憲法にうたわれた国民の武器所有の権利を確認する判断を示しており、08年6月には一般市民の拳銃所持を一律に禁じている首都ワシントン(コロンビア特別区)の厳格な銃規制条例を違憲と判断した。銃規制をめぐり憲法解釈が示されたのは1939年以来70年ぶり。連邦最高裁は2010年6月、市民の拳銃所持を禁止したシカゴ市の条例についても違憲と判断した。