人種、肌色、民族、宗教、性別、性的志向、身体障害に対する偏見や差別が原因とされる犯罪はヘイト・クライム(憎悪犯罪)と呼ばれる。不況下で増大する国民の不安や不満を背景に近年、ヘイト・クライムが深刻化している。2009年6月には、第二次世界大戦中のユダヤ人虐殺を記録した首都ワシントンのホロコースト博物館で、黒人警備員が白人至上主義者の男に射殺される事件が起きた。人権団体の調査によると、白人至上主義の団体が勢力を拡大している。不法移民の増加に伴いヒスパニック系移民が襲われる事件も増えている。ヘイト・クライムを禁じた連邦法(1968年成立)は、人種や宗教に関する偏見や差別に基づく犯罪を適用対象にしていたが、オバマ大統領は2009年10月28日、適用対象を同性愛者や障害者への差別にも拡大する法案に署名した。1990年に制定されたヘイト・クライム統計法に基づき連邦捜査局(FBI)は毎年アメリカ国内で報告された件数を公表しているが、近年は年間約6000件で推移している。