ニクソン米大統領を1974年に辞任に追い込んだウォーターゲート事件を暴いたワシントン・ポスト紙のボブ・ウッドワード、カール・バーンスタイン両記者の主要情報源だった人物につけられた仮名。その正体をめぐっては30年以上にわたってさまざまな憶測が流れたが、当時のFBI(連邦捜査局)副長官マーク・フェルトと判明した。正体を知っていたのは両記者のほか当時のブラッドリー編集主幹だけで、両記者は「本人が死ぬまで公表しない」と沈黙を守っていたが、フェルト自身が月刊誌「バニティ・フェア」誌上で認めたことから、ポスト紙も2005年5月、公表に踏み切った。フェルトは91歳の高齢のため「亡くなる前に真実を明らかにする必要がある」と判断した家族に説得されて自ら正体を明かしたという。ディープ・スロートは、当時の人気ポルノ映画の題名で、フェルトはFBIによる事件捜査の全容を知りうる立場にあった。ウォーターゲート事件とは、1972年6月、ワシントンのウォーターゲート・ビルにある民主党全国委員会本部に5人組が盗聴器を仕掛けるために侵入し逮捕された事件。ポスト紙の両記者が調査報道で事件を追及し、同年の大統領選でニクソン再選をめざし活動していたグループと5人組との関係を突き止め、ホワイトハウスの関与も明らかにされた。自身による事件もみ消しの工作も明るみに出されたニクソン大統領は74年8月、辞任に追い込まれた。フェルトは2008年12月18日、95歳で死去した。