2006年2月に成立した保守党連邦政権。保守党は、同年1月に実施された連邦総選挙で、補助金不正支出のスキャンダルにみまわれたライバルの自由党を破り、13年ぶりに政権の座に復帰した。しかし保守党も過半数に満たず、ハーパー政権は不安定な基盤で出発した。08年10月に行われた総選挙でも、保守党は議席を前回よりは増やしたものの、過半数を制することができなかった。他方、自由党はこの選挙で議席を減らした。その後、同年12月には3つの野党が連合を組んで、ハーパー政権を倒そうとする動きが出たが、ハーパー首相は09年1月下旬まで国会を停止(停会)するという対抗手段をとった。10年12月の世論調査によれば、保守党の支持率は32%に過ぎず、自由党の26.5%など、野党も一定の支持を受けている。有権者のハ―パー政権や保守党への評価は限定的と見るべきであろう。その後、11年5月に行われた連邦総選挙において、ハーパーの保守党は過半数を大きく上回る166議席を獲得して、ようやく安定政権を実現した。他方、ライバルの自由党は低迷し、その分、新民主党が最大野党になるという予想外の結果が生まれた。保守党政権としての実績の例としては、06年の就任以来、ハ―パー政権は自由党政権下で続いた政治腐敗を打破するとして、野心的な政治改革案を提示してきている。すでに行われているのが企業や労働組合からの政党や政治家への献金の禁止である。他方、まだ実行できていない案としては、上院改革がある。カナダの上院議員は、連邦政府によって選任され、75歳の定年まで終身の身分だが、これに8年の任期を設け、それぞれの州での選挙で候補者を選ぶ、という内容である。また、州により議員定数が不均衡な下院の改革として、11年の国勢調査の結果を踏まえ、州によっては議員定数を増やすことを提案している。これについては、議席数が多い州で保守党の議席を増やして安定政権を作りたいのではという憶測もあり、純粋な政治改革とは考えにくい。