戦後のカナダ外交は国連平和維持活動やミドル・パワー外交などでその独自性を確立してきたと言われる。最近では人間の安全保障論や、対人地雷の国際的な規制を盛り込みユニークな手法で成立させたオタワ・プロセスなどでも、世界的な注目を浴びた。また、透明度が高く現地社会のニーズを考慮した発展途上国へのODA(政府開発援助)政策なども有名である。カナダ外交を見るには、カナダ外交を取り巻く環境を考慮することが重要であり、こうした環境の変化に応じて外交も変化している点に留意しておくべきであろう。まずカナダには隣国のアメリカとの協力関係を維持し、発展させるという大きな課題がある。NAFTA(北米自由貿易協定)に代表されるような経済面での協力に止まらず、NATO(北大西洋条約機構)への加盟やアメリカとの共同軍事機構であるNORAD(North American Aerospace Defense Command 北米航空宇宙防衛軍)など、安全保障でも該当する。他方、国連や多数の国際機関との関係も、カナダが構築してきた外交資産と言えよう。また、北欧諸国やオーストラリアなど、カナダと同じような立場にある国々との協力関係を軸として、独自な外交政策を発展させたいという、いわば独自の路線も指摘されよう。2001年の9.11アメリカ同時多発テロを受けた、両国の国境管理の強化や反テロ法の制定、アフガニスタンへのカナダ軍の派遣などは、現実主義的な対応と言える。他方、イラク戦争時にアメリカに要請されたイラクへの兵力派遣を拒否したのは、カナダの独自性を守りたいという側面が出てきたものと言えるだろう。