カナダ社会の多様性を反映させる政策の一つ。これには1960年代後半に能力や学歴などを基準として移民を受け入れる制度(ポイント制)が導入され、その結果、アジアやアフリカからの移民が急増したという歴史的な変化が大きく作用している。71年、当時の連邦首相P.トルドーがそれまでの「二言語政策・二文化政策」から「二言語・多文化主義」へと転換するという演説を下院で行い、70年代から多文化主義への動きが本格化した。しかし、多文化主義政策の中身をどう考えるかについては、人種差別の禁止から始まり、エスニック集団や移民集団の文化的特質に対する尊重、アファーマティブ・アクションの採用、そして集団間の社会的・経済的格差を改善すべきだというものまで様々な議論があり、一般的な合意があるわけではない。また88年に多文化主義法が制定されたが、これは主に連邦の官庁や行政機関を対象としたものである。