カナダはイギリスの植民地としての歴史が長いこと、そして隣国のアメリカの影響を受けやすいことから独自な文化が形成されず、固有な国民文化が不在という弱点を抱える。そのため第二次世界大戦後から対応策が検討され、1951年には連邦政府はカナダ文化の現状を分析する特別調査委員会(マッセー委員会)を設立した。カナダ経済におけるアメリカ資本の強さから、民間企業に文化の育成を全面的に委ねていてはカナダ文化の発展は難しいという判断によって、カナダの連邦政府や州政府は文化活動に対して公的支援を行ってきた。カナダ映画庁(NFB)と呼ばれる映画の製作を担当する専門的な政府機関(39年設立)もユニークな映画を生み出してきた。文学の例を挙げれば、マーガレット・アトウッドはカナダ文学論「サバイバル」(72年)で、カナダにも(イギリスやフランスなどと同じように)国民文学が存在することを証明した。厳しい自然や冬の寒さからの生き残り、そして大国アメリカからの生き残りなどがカナダ文学共通のテーマだというのである。最近では先住民を含むカナダ人による作品ばかりでなく、移民体験のある作家(あるいは2世、3世の移民世代)たちが話題作を刊行するようになっている。