アメリカの多くの公立学校では生徒たちが毎朝、星条旗に向かって「私はアメリカ合衆国の国旗に忠誠を誓います。そしてすべての人々に自由と正義が存する、分かつことのできない、神の下での一つの国家である共和国に忠誠を誓います」と朗唱する儀式が行われる。この朗唱は、フランシス・ベラミーという牧師の提唱で、1892年のコロンブスデー(10月第2月曜日)に始められたとされる。「神の下で」という語句は1954年に採択された連邦下院決議で挿入されて以来、政教分離に反するのではないかと論議の対象になった。娘が「忠誠の誓い」を強制させられているのは憲法で保障された信教の自由の侵害だとしてカリフォルニア州の医師が2000年に教育委員会などを相手に提訴したが、一審判決は父親の訴えを却下した。しかし、サンフランシスコ連邦高裁は02年6月、一審判決を破棄し、誓いの中の「神の下で」(under God)という語句は「国家による特定宗教の支持にあたる」として政教分離を定めた合衆国憲法に違反するとの判断を示した。教育委員会側の上告を受けて連邦最高裁は04年6月、高裁の違憲判決を覆し、原告の訴えを門前払いした。原告の父親には親権がなく提訴する資格がないとするもので、「忠誠の誓い」自体について憲法判断には踏み込まなかったため、公立学校での朗唱は継続されることになった。