2006年から08年にかけて、カナダの連邦政府は歴史的な人種差別政策に対する3つの謝罪を行った。最初は19世紀末から1923年までの期間、中国からの移民に課せられていた人頭税について。2006年6月、ハーパー首相は連邦下院でこれについて正式に謝罪し、補償も行うとした。二つ目が、19世紀末から20世紀初頭にかけて、西部などで行われていた先住民の児童に対する同化政策について。08年6月、ハーパー首相はこれについても連邦下院で公式に謝罪し、補償も行うとした。三つ目が「コマガタ丸事件」について。この事件は、1914年5月、インドからの移民希望者を乗せてバンクーバーへ入港したコマガタ丸が、入国・上陸を2カ月間拒否されたうえ、ほとんどの乗客がインドに引き返すことを余儀なくされたもの。入国を拒否された人々の大半がシーク教徒だったことから、2008年8月、ハーパー首相はバンクーバー郊外の都市において、正式謝罪を行った。ただし、謝罪の場が連邦下院ではなく、また金銭的な補償も伴わないことから、シーク系のカナダ人からは不満の声が出たとされる。歴史的には、自由党がエスニック・マイノリティーとの友好関係を維持してきた。これらの謝罪は、過去の過ちを積極的に認めることで、保守党も、多様な民族・エスニック集団との新しい関係を築こうとする試みと理解することもできる。1988年には、第二次世界大戦中に日系カナダ人が内陸に強制移住させられたことについて、連邦政府が謝罪し、補償を行っている。