アメリカのオバマ政権による医療保険制度改革。先進国で唯一、国民皆保険制度がないアメリカでは、公的医療保険制度は65歳以上の高齢者向けのメディケア(Medicare)と低所得・障害者向けのメディケイド(Medicaid)などで、加入者以外は個人や企業が民間保険に加入している。公的保険の対象外で、高額の保険料を支払えないため民間保険にも加入していない無保険者は人口の15%に当たる約4600万人に上る。不況下で勤務先から保険を打ち切られたり、失業して保険を失ったりするケースが増えている。このため2009年1月に就任したオバマ大統領は医療保険改革を初年度の内政上の最優先課題に据えた。国民皆保険を目指す医療保険制度改革法が10年3月に成立し、オバマ政権が推進する医療保険制度改革は、大統領の名前とヘルスケア(健康管理)を組み合わせてオバマケアと呼ばれるようになった。成立後、保険加入義務化は憲法1条が定めた連邦議会の立法権限を逸脱し、個人の自由を侵害するという訴えが相次ぎ、下級裁判所で違憲とする判断も出たが、連邦最高裁判所は12年6月28日、合憲と判断した。オバマ大統領は14年4月1日、オバマケアの保険加入登録者が目標を上回る710万人に達したと発表した。しかし、無保険者に罰金を科してまで保険加入を義務づけるオバマケアの手法にアメリカ国民の間で反発も根強く、野党・共和党が過半数を占める下院は同年11月、オバマケアの法律施行で行政権を逸脱しているとしてオバマ政権をワシントン連邦地方裁判所に提訴、12月には17州が違憲訴訟を起こした。