2001年の国勢調査によれば、カナダではイスラム系住民の比率は2%(実数は約58万人)と小さいが、これはユダヤ系住民の2倍となる。さらにイスラム系の移民が比較的若いこともあり、1991年から2001年にかけての人口増加には顕著なものがある。カナダでもイスラム系住民とカナダ社会との摩擦が表面化しつつある。06年6月、トロント郊外に住む17人の若いイスラム教徒が首相の暗殺や国会議事堂の爆破などのテロを企てたとして逮捕された。彼らは、国外のテロ組織の指令を受けていたのではなく、自分たちの判断と意思でこれを行なったとされている。一方、02年9月にはシリア系カナダ人のK.アラー氏がテロリストと疑われてアメリカで拘束され、本人の意思に反してシリアに送還されたうえ、シリアの刑務所に1年間収容されるという事件も起こった。03年10月にカナダに帰国したが、後にカナダの連邦警察がアラー氏についての誤った情報をアメリカの情報機関に提供していたことが判明。連邦政府は調査委員会を設けて、調査を行い、07年1月には首相の正式謝罪と10万ドルの補償金をアラー氏に支払うことが確定した。ほかに選挙の投票時に07年にイスラム系女性のベールを着用することを禁じる法改正が行われ、議論になるなど、カナダ社会とイスラム系住民の共存は容易ではない。